80's Best


The Smiths「The Queen Is Dead」(1986)

80年代のイギリスに於ける最重要バンドと言えば、まずスミスになるだろう。それは今も尚不変の事実であり、ボーカル、モリッシーの信奉者は後を絶たない。その最高傑作である本作は、正にタイトル通り王室批判を冠していた。

当時のイギリスで最も影響力を持つグループであった彼等の歌は、それは美しい物だった。表題曲の激しいリズムから流麗なジョニー・マーのギターが爪弾かれる瞬間、UKロック史上最も美しい曲とされる"I Know It's Over"等。

その楽曲の素晴らしさだけでなく、同性愛や人種にも理解のあるモリッシーをスポークスマンとし、解散後も再結成が最も期待されるバンドでもある。



The Stone Roses「The Stone Roses」(1989)

80's UKロックを代表するバンド、ストーン・ローゼズの1st。マンチェスター出身の彼等は、後にそこから発生したマッドチェスター・ムーヴメントの中核を成すバンドとして、短い活動期間ながら圧倒的な影響力を持つ事となった。

特に記念碑的とさえ言える本作は、楽曲の力としても非常に優れた物だった。冒頭を飾る"I Wanna Be Adored"の「憧れられたい」というスター願望を歌った渇望、"She Bangs The Drums"は素晴らしくポップな名曲、ラスト"I Am The Resurrection"の強烈なドライヴ感。

この名作を残しつつ解散、近年再結成を果たしフジロックで来日もした。コアなファンの多い彼等だが、それはこれを聴けば肯ける。



U2「The Joshua Tree」(1987)

アイルランド出身の母国を代表するバンド、U2の代表作。ボーカル、ボノのカリスマ的魅力やギター、エッジのポストパンクから大陸的ロックに移行したスタイル等、未だ不変のメンバー四人の結束が織り成す音楽は、ロック史上最も普遍的な物だった。

"Where The Streets Have No Name"の圧倒的にポジティヴな全てを肯定するかのメッセージ、"I Still Haven't Found What I'm Looking For"の邦題「終わりなき旅」通りの荒野に立つかの世界観、そして珠玉の名曲"With Or Without You"。

世界規模で名声とポピュラリティを獲得した彼等だが、特にライヴに於ける本質は最も剥き身にされたロックその物と言って良い。正に活けるレジェンド。



New Order「Low-Life」(1985)

マンチェスター出身の国民的グループ、ニュー・オーダーの3rd。ジョイ・ディヴィジョンの解散後、メンバーだったバーナード・サムナー、ピーター・フック等が中心となり結成された。その音楽は、前身バンドの影を引きずる事無いポジティヴなダンス・ロックだった。

本作は彼等の全盛期と言える80年代に残された名作で、前作までに形作られたバンドとしての形が、よりグレードを高めて結実した物だった。特に"The Perfect Kiss"は彼等の曲の中でも最も人気の高い一曲。

決して高いとは言えない演奏力や、バーニーのぶっきら棒なボーカルが足枷となるどころか、バンドの愛すべき特徴となっているのが、いかにも英国のバンドらしいのでは。



Talking Heads「Remain In Light」(1980)

元祖ポスト・パンクの代表格と言える、トーキング・ヘッズの代表作。彼等の音楽は、アートと呼べる位の芸術的な物だったが、そんな枠組みを本意としない程に、エネルギーの高いグループだったのは、本作を聴けば間違いないと断言し得る。

ライヴでは最強のキラー・チューンと化す"The Great Curve"、独特のメロディと曲調が先鋭的な"Once In A Lifetime"等、正にトーキング・ヘッズでしか成し得ない音楽。

気難しそうなボーカル、デヴィッド・バーンの歌は正にバンドの象徴だが、そこに現れた決して大衆に媚びない反俗的な姿勢には共感を覚えずにはいられない。



Pixies「Surfer Rosa」(1988)

オルタナロックの原点、ピクシーズの1st。彼等の最も優れた点は、そのずば抜けたソングライティングにあった。ニルヴァーナのカートやレディオヘッドのトム、U2のボノ等彼等を信奉するミュージシャンは顔ぶれから凄いが、そんな圧倒的な魅力が彼等にはあった。

オープニング"Bone Machine"のぶっといドラム、凄まじく陽性のキム・ディール、ボーカル曲"Gigantic"、とどめの名曲"Where Is My Mind?"等、挙げればキリがない程。

彼等は当然の如く最強のライヴアクトでもあり、それはフジロックの初来日で日本のファンにも証明済み。正にオルタナ真の伝説と呼んで間違いない。



Sonic Youth「Daydream Nation」(1988)

アンダーグラウンドロック界に於ける影番的存在、ソニック・ユースの5th。常にインディー・シーンで活動して来た彼等は、安易な成功等望まず淡々と、しかしライヴ等に於いては凄まじく過激な音楽性でリスナーやオーディエンスを圧倒して来た。そんなバンドの決定作がこれ。

「白昼夢国家」というアルバム名には底知れぬ深さを感じるが、代表曲"Teenage Riot"の気だるいメロディ、疾走するビート、歪んだギターには正にロックの未来があった。

結果としてシーンの盛衰には左右されないキャリアを重ねて来た彼等だが、そのロックに賭ける信念は誰より強く、決して揺らぐ事はない。


Jane's Addiction「Nothing's Shocking」(1988)

元祖オルタナロックバンド、ジェーンズ・アディクションのメジャー1st。このバンドはフロントマン、ペリー・ファレルのスポークスマンとしての活動や、彼が提唱し一大フェスとなったロラパルーザ等と共に語られる事が多い。しかし、そうした活動は全てジェーンズ本体に還元されている。

そのオルタナ前夜にシーンに現れたバンドの、最も充実していた頃がこの時期。"Ted,Just Admit It"の複雑で入り組んだアレンジに「Sex is violent!」と叫ぶ瞬間、"Jane Says"のピースフルな空気。

あらゆる面で時代の先を行っていた彼等だが、それは後のバンドに遺伝子として受け継がれていく。偉大なバンドだ。


XTC「Black Sea」(1980)new!

70年代末から80年代に掛けて活躍した、XTCの4th。その奇妙なメロディやアンサンブルを持ちながら、圧倒的にポップでアートというのが彼等の最大の魅力。その数ある作品の中でも、最も骨太でロックなのが本作。NWの中でもひときわ輝きを放っている。

冒頭の"Respectable Street"の重いリズムや、個人的にXTC史の中でも一、ニを争う名曲だと思う"Living Through Another Cuba"等が聴き所。音の良さとソングライティングが魅力。

彼等は特にコアなファンの多いバンドなので、最高傑作というと難しい。しかし、その時代感覚も含め秀逸な作品だと言える。


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